それから二時間……
「もう、帰ろう…」
僕は立ち上がり、冷えきった身体を縮めながら、
出口に向かって歩き出した。
凍えた地面を踏みしめて、わざとゆっくり歩いた。
もしかしたら詩野が現れるかもしれない…
そんな奇跡を信じて…
噴水を横切った所で、一匹の猫が僕の足元に身体を寄せる。
「なんだ?お前も寒いのか?」
僕はその場にしゃがみ込み、その冷えた身体を丁寧に撫でてあげた。
「あれ?お前…」
右目の周りだけ真っ暗な猫。
「ニャン吉か…?」
間違いない。
僕らが昔いじめていた時はまだ小さい小さい子猫だった。
あれから十数年…
「こんなに大きくなりやがって」
ニャン吉は何か言いたそうに僕から離れようとしない。
「どうした?もしかして応援してくれてるの?ごめんな…昔あんなひどいことしたのに。ありがとう、優しいんだなお前。でも大丈夫。僕だって変わったんだ。お前みたいに…強くなったんだ」
そう言うと、ニャン吉は元気よく茂みの中へと走って行った。
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