大輔が震える浩二の腕を掴んだ。
「もういい浩二。今日は帰ろう」
ハリネズミは見下すように詩野を指差し、
「歌手になんかなれやしねぇよ。早く帰れ馬鹿が!」
そう言ってゲラゲラと笑った。
どうして……
こんな奴に詩野を否定する権利なんてない。
他人を傷つけることでしか自分を表現できない。
こいつは人間のクズだ。
「アンタ、なんにも変わってないんだな」
「は?」
僕は詩野を守ってやりたいという一心で、
ハリネズミを思いきり殴った。
「痛ぇなコラ!」
僕は倒れたハリネズミにまたがり、もう一度殴った。
理性を失った僕を、
浩二と大輔が止めに入るが、それでも殴り続けた。
そのままハリネズミが尻尾を巻いて逃げるわけもなく、
当然のように僕も殴られた。
「ふざけんじゃねぇぞこの野郎!」
そう言って僕の胸ぐらを掴み、
何度も何度も殴ってくる。
でも、詩野の痛みに比べれば、こんなの痛くも痒くもない。
それでも意識は徐々に遠ざかり、
僕はその場に倒れ込んだ……
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