弱い風が少しずつ吹き始めた。
僕らの笑い声は、そんな風に乗ってゆっくりと運ばれてゆく。
今まで詩野の歌を聴いてくれた人の元へ…
この想いは届くだろうか。
みんなどこかで僕らと同じように応援してくれてるはずだ。
そんな人達の声が、
今度は温かい風となって返ってきた気がした。
それに応えるかのように、
詩野がギターに手をかけ、優しく弾き始めた。
自信に満ちたそのメロディーが今度は僕らを囲み、
特別な居場所を作り出す。
明日もこの調子で。
願いは必ず届く。
神様、どうか詩野に微笑んで――――
「おい!」
詩野の手が止まる。
僕は、背後から聞こえてくる怒鳴り声に、
戸惑いながらも振り向いた。
.
