詩野がギターを止めると、
それまで吹いていた冷たい風がピタリとやんだ。
「どうした?」
大輔が心配そうに尋ねる。
「いよいよ、明日なんだね。明日が最後だなって。私……大丈夫かな?」
「なんだよ。らしくないな」
「なんか不安で…」
そんな下を向く詩野に大輔は、
「顔上げろよ。馬鹿だなお前は。最終まで残ったんだぞ?自信持て」
「そうだよ詩野ちゃん。今まで聴いてくれた人達の顔、覚えてるだろ?みんな嬉しそうにしてたじゃん。なぁ一軌」
「うん。いつも通りやれば大丈夫。な?だからリラックスリラックス」
「そうよね。ありがとうみんな。とにかく明日は全力でぶつかってくる」
「よし、じゃあお決まりの台詞は?」
僕はそう言って親指を立て、詩野に突き出した。
「お決まりの?」
「ホラ、あれだよ」
「あーあれね!」
詩野は僕の動作を真似て、
「みんな!楽勝で優勝してくるわ!」
力強く声を張る。
「よし!これでいつも通りの詩野ちゃんだ。ガンバ!」
「ハハ!それは昭和でしょ?」
「そっか。ハハハ!」
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