「自分で言うなよ」

「ハハ。ごめんごめん。」



――――…

雨は弱まることを知らない。

少し風も強くなってきた。

時折、勢いのいい風が、

冷えた空気を鋭く切る音が僕らの間に響いた。



「とにかく、オーディションに入ってからは、詩野ちゃんは自分との闘いなんだ。俺達はそれをそっと後押ししてやればいい」

「今できることは…」

「仲間を信じて…」

「待つこと」


「…人を信じれない奴は自分自身も信じれないぜ?」

「……。何が言いたいの?」


「つまり…」

「なんだよ」

「お前も自分を信じろってことだ」


「……」

「もちろんそのつもりはあるん…」

「あるよ。でもタイミングは自分で決める」

「そうだな。ゆっくりでいい。自分を信じるまで。お前なら大丈夫。俺はお前を信じてる」


渇いた唇をコーヒーで潤す。

高鳴る胸を抑えようと、ゆっくりと吐いた息を、

大きな雨音が薄暗い空へとさらっていった。



それから僕は、

ゆっくりと今の想いを語り始めた。

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……






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