小学生の頃、

嫌いなニンジンが食べられず、放課後まで教室に残されたことがあった。


あの時と同じように、

夢のない僕は、何だか社会から、

いや…

世の中から取り残されたような感じがした。




だとしたら、

僕に彼女の歌を聞く資格なんてない。


そう思い、僕はその場を立ち去った。





きっと僕は…


『勝ち組』なんかになりたかったんじゃない。


夢を持った人に憧れていたんだ。



恥ずかしがらず、ただがむしゃらに夢を追い掛ける人に…




道の横に敷き詰められた砂利の上をわざと歩く。

石と石がぶつかり合うその音が、情けない自分をかき消してくれると思った。



もうここに来るのはよそう。



そう思ったのに、何故か彼女の歌声が、

耳元から徐々に遠ざかっていくのが、少し寂しかった。





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