「お母さん、やっぱり東京で一緒に暮らした方がいいわよ」
「そうかねぇ」
「この家に一人じゃ寂しいでしょ?それに、何かあったら大変じゃない」
「でもねぇ」
「病気になってからじゃ遅いのよ?」
祖母は悩んでいるような素振りを見せてはいたが、
結局今回も、受け入れることはなかった。
祖母にとって、
ここは居心地が良く、もう自分の身体の一部のようなものなのだろう。
だから、いくら生活が今より裕福になろうと、
手放すことはできないし、この地を離れることはできない。
有名なスポーツ選手が、
お金よりも、長年愛したチームに残ることを希望するようなものだ。
そういうものは、誰にでもあるはず。
僕にとってそれは…
「ちょっと散歩してくる」
僕は食べ終わったスイカを台所に置いて、
玄関を出た。
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