親子丼を食べ終わり兄にご飯を持って行く。
部屋のドアをノックすると“はい”と声がした。

「兄さん、ご飯持って来た」

「おう、サンキュー」

ドアを開けるとベッドの上で兄さんが何かの本を読んでいる。
しおりを挟んでこちらを見る。

「ん?どうした?」

「いや、何の本読んでるのかな?と思って」

「陵に借りてさ、中々面白いよ」

「そうなんだ・・・」

「お前も読むか?」

「い、良い!!ぼ、僕、本読まないし」

「たまには読んだ方が良いぞ」

「はいはい、ほら親子丼だよ」

兄の近くに丼を置く。
兄は嬉しそうに笑い食べ始めた。

「ん~美味しい」

「ホント、羨ましい・・・」

「ん?」

「兄さん、幸せそうで羨ましいな」

「ん~蓮は恭弥君と一緒に居ると幸せそうだよ」

「えっ!?マジ・・・」

「あぁ、もしかして気づいてなかったのか?」

「ギクッ」

「図星か・・・」

まさか自分が恭弥の前で幸せそうなんて・・・知らなかった。
でも、恭弥の近くに居ると自然と笑顔になる自分が居る。
どうして・・・・?

「んっ・・・ご馳走様」

「あ・・・じゃ、薬飲んで」

「分かってるよ、蓮」

「ん?」

「自分の気持ちに・・・正直になれよ」

「えっ・・・」

「忠告だ・・・」

「・・・兄さんもね、あまり陵さんを怒らないように」

「・・・分かったよ」

僕は食器を持って兄の部屋を出る。
落とさないようにゆっくり・・・ゆっくり・・・

(自分に・・・正直か・・・)

「はぁ~・・・」

ガチャッとドアを開けて台所に向かう。
いつの間にか恭弥の姿はなく、陵さんだけが居た。