「おい、澪」

「・・・ん?」

「どうした?沈黙してさ」

「・・・お前のせいで母さんの事思い出しちゃったんだよ」

「思い出したって・・・」

「俺の母さんは事故で亡くなった、このお弁当は俺が作ってんだよ」

「じゃ、父親は?」

「・・・あんな奴、知らない」

「嫌いなのか?」

「あぁ、大嫌いだ」

「そうか」

そう言って陵はパンを齧る。
俺もお弁当の中身を食べる。

「澪の弁当・・・うまそーだな」

「そうか?」

「俺に作ってくれよ!」

「ヤダ」

「頼むよ!一回で良いからさ」

「・・・一回だけだぞ・・・」

「ヤリッ!」

陵がメチャクチャ喜んでいる。
ムカつくけど・・・何か・・・嬉しい・・・

(はっ!俺は何を考えてるんだ!!)

俺は今考えた事忘れようと頭を横に振る。
そんな事をしていると陵が俺の玉子焼きを掴み取り食べてしまった。

「あっ!俺の玉子焼き!」

「良いじゃねーか!美味いな!」

「うっ・・・はぁ・・・もう良いや」

「お前器用だな」

「出来て当たり前だろ?」

「そうかな?」

陵が興味深そうに俺を見る。
俺は気にしないように弁当の中身を食べる。
こいつの視線を気にしたら負けだ。

そう思っているとふいに俺の顔の前が少し暗くなった。
チラッと見ると陵の顔が近くにあった。