真っ直ぐ前を向いていても速水の視線を感じる。
横目で速水を見ると、ジーと俺を見ている。
な、何だ?
「速水?俺の顔に何か付いてるか?」
「いいえ。先生って、タバコ吸うんだなぁと思って」
速水の前でタバコを吸うのって初めてだったか?
「あ、ゴメン。煙たかったか?」
「いえいえ、タバコの煙には慣れてるので大丈夫です」
「はっ?」
まさか、吸ってるとか?
「あ、私は吸ってませんよ?」
「ビビった~」
「親がヘビーで、それで慣れてるんです。もう、家の壁なんて真っ黄色ですよ」
速水はそう言ってクスッと笑った。
家の中で吸えばそうなるだろうな。
俺はベランダか換気扇の下でしか吸わないから、幸にも部屋の壁は白さを保ってる。



