寝ている速水を起こさないように、ベッドの部屋を出て、椅子に座った。


それから、どれくらい時間が経ったのか……。


俺は速水が起きるまで、本を読みながら待っていた。



「先生?」



荷物を持った速水がベッドの部屋から出て来た。


やっと起きたか。


パタンと本を閉じて、机に置いた。



「寝ちゃいました。エヘヘ」



そう言ってハニカム速水。



「先生、待っていてくれたんですね」


「あぁ」



生徒を残して帰れないだろ?



「ありがとうございます」


「いいえ。さっ、帰るぞ」



俺は本を鞄に入れ、椅子から立ち上がった。



「靴、あんまり乾いてないけど履けないことはないから。上履きで帰るよりマシだろ?」


「わわ!ありがとうございます!」



速水は頭を下げると、上履きを脱いで靴を履いた。


落書きのことは一言も言ってこない。


だから俺も何も言わなかった。