「なぁ、お前さぁ、何で七夕の歌の中途半端な部分からハミングなんだ?」
「あー……えっと、ですね、途中から歌詞を知らないって言うか……合ってるか自信がないんです」
速水はそう言って“アハハ”と笑った。
わからねぇなら歌うなよ。
「先生?」
「ん?」
「七夕のお話、知ってます?」
「あぁ、織り姫と彦星のやつ?」
七夕の話ぐらい誰だって知ってるだろ?
「そうそう。年に1回だけしか会えないなんて悲しいけど、何かロマンチックですよね」
「そうか?」
「もぉ!先生って、やっぱり冷めてますよね。織り姫と彦星のロマンをわからないなんて」
いや別に、わからなくても生きて行けるし……。
てか、男の俺にロマンとか求められてもな……。



