「悪いけど、お前とはもう会わない」
俺は女にそう冷たく言い放った。
泣きじゃくる女を横目に、ベランダから寝室に入り、自分の荷物を持って寝室を出た。
子供のオモチャが転がったリビング。
壁にはクレヨンや色鉛筆で描いた絵が貼ってある。
ダイニングのテーブルには大人用の椅子と子供用の椅子。
そこには幸せそうな家族の生活があることがわかる。
「ねぇ?待って!」
女が俺を追い掛けて来た。
それを無視して玄関に向かう。
「ゴメン、私が悪かったわ。そうだったわね。そういう約束だったわね。もう言わないから……だから……ねぇ?」
「悪いけど、もう無理だから」
俺は靴を履き、女にそう言うと玄関の外に出た。
中から女の泣き声が聞こえてくる。
その泣き声に同情するわけでもなく。
俺は女のマンションを後にした。