「小さい頃に、隣に住んでた幼なじみの男の子が教えてくれたんです。月にはウサギがいるんだよって」
「へぇ、それを信じてるんだ」
「はいっ!」
教えた男の子も笑うだろうな。
17歳になっても月にウサギがいることを信じてるんだから。
良く言えば純粋、悪く言えばガキだな。
「じゃあ、聞くが、ウサギは月でどうやって生活してるんだ?」
「ウサギは月で、お餅をついてるんですよぉ!」
「ふーん……」
「あっ!先生、信じてないでしょ?」
大人になっても信じる方がどうかしてると思うが……。
「どんなお餅なんだろう……」
速水は再び月を見上げ、そんなことを呟く。
「あんこかなぁ、きな粉かなぁ、黒ゴマかなぁ、それとも醤油かなぁ……。うーん……。」
悩むことかよ!
その時、速水の方から“キュルル”と可愛い音が聴こえた。



