外は、すっかり暗くなり、校庭から聞こえていた生徒たちの賑やかな声も聞こえなくなった。
そろそろ帰るか。
椅子に座ったまま背伸びをして、パソコンを閉じる。
帰る用意をして準備室と化学室を繋がるドアを開けた。
ドアを開けた途端、春風に包まれた。
開けられた窓から入る春風にカーテンが揺れている。
窓の前に立っている人。
夜空を見上げるその人は、月明かりに照らされていた。
その場に立ったまま動けない。
一瞬だけ“トクン”と胸が高鳴る。
七星?
そう思った瞬間、魔法が解けたように現実の世界に引き戻された。
いや……違う……。
七星がいるわけない。
じゃー、あそこにいるのは……。
「まだ帰ってなかったのか?」
七星ではなく速水。
「うへっ」
突然、声をかけられた速水は口から変な言葉を発し、こちらを向いた。



