化学準備室のドアが開く。
「あっ!先生、みっけ!」
そう言って、俺を指差しゲラゲラ笑う速水。
お前は小学生のガキかよ……。
「生徒は立入禁止」
速水の方を見ることなく、パソコンの画面に目をやったままそう言った。
「あぁ!ずるーい!昨日まで部外者だったのに!言い直すなんて、ずるいです。先生の意地悪!」
「はいはい。何とでも言ってくれ」
お前と違って学習能力はあるんだよ。
「ブー!」
速水は準備室のドアを閉めた。
飽きもせず化学室に来て、準備室のドアを開け、俺に追い払われる。
速水が入部してから、この同じやり取りを何度も繰り返してきた。
それでも懲りない速水は、やっぱり鈍感な性格なんだろう。