七星のことも、よく車で送っていたな……。
誰もいなくなった校舎から堂々と手を繋いで駐車場に行って、車の中でもずっと手を繋いでいた。
ずっと笑顔で話しをして、時には寄り道したりして……。
今、俺の隣には速水がいる。
七星そっくりな速水が。
でも七星じゃないんだよ……。
そんなことを考えながら、車は渋滞に巻き込まれることなく目的地に着いた。
週末と違って、人は少ない。
駅前の大通り、タクシーが路駐している場所に車を停めた。
「ここでいい?」
「はいっ!大丈夫です。ありがとうございました」
速水は頭を下げると、シートベルトを外して、助手席のドアを開けた。
外に出て、ドアを閉める前に速水は腰を屈め、目線を俺に合わせた。
「先生?明日も放課後、化学室へ行きますね」
速水はそう言って、俺の返事も待たずにドアを閉めた。
そして、笑顔で手を振ると、車が停まっている反対方向にある駅の方に歩いて行く。
速水の背中をバックミラー越しに見ながら、ゆっくり車を出した。
天文部の活動はしない。
それが入部の条件。
だったのに――……。