「こんなとこにいたの?」
バスローブ姿の女はそう言って、俺の隣に立った。
「私にもタバコ、ちょうだい?」
女の要求にタバコのボックスを無言で差し出す。
女はタバコを1本取り出し、口に咥えて火をつけた。
とても主婦の爪とは思えないほど、綺麗にネイルアートされた長い爪。
「夜空を見るのって好きだよね?」
女はそう言って、タバコの煙を吐き出し、クスクスと笑った。
「あぁ」
俺は、怠そうに返事をした。
「それに、その女の子がつけるようなネックレス。いつもしてるよね?」
バカにするように笑いながらそう言う女。
チャームを握る手に力が入る。
「何か、あんの?」
女はそう言うと、ベランダの室外機の上に置かれた灰皿にタバコを押し付けた。
「別に?」
俺は夜空を見ながらそう返事をした。



