「うはっ!もう、こんな時間!」
速水から見て正面の黒板の上にある時計を見て、速水が声を上げた。
速水の声に自分の腕時計を見る。
時刻は19時前を指していた。
もう、こんな時間だったのか……。
「ヤバ、早く行かなきゃ。ホントにヤバイし……」
オロオロしながら、そう独り言のようにブツブツ言う速水。
“帰らなきゃ”と言うならわかるけど“行かなきゃ”って……。
「塾か何か習い事でもあるのか?」
「へっ?」
我に返った速水が俺を見る。
「私、習い事も塾も何もしてませんけど?」
「えっ?でもさっき、行かなきゃって……」
「あっ!」
俺の言葉に慌てて口を押さえる速水。
速水はバツの悪そうな顔をして俺を見る。
この先は聞かない方がいいのかもしれない。
そう直感した。



