「先生?可愛い子供に小鳥なんて漢字を使う親がいますか?」
「あ、えっと、いや……」
可愛い子供に小鳥なんて漢字を使う親なんていないか。
「正しくは、こうです!」
彼女は入部届をファイルの隣に置く。
それを見ると、可愛らしい字で“速水琴梨”と書いてあった。
俺はファイルに書いた間違った名前に二重線を引き、その下に“速水琴梨”と書き直した。
「これでいいですか?」
「はいっ!バッチリです!」
彼女、いや速水はそう言ってクスクス笑った。
速水琴梨、17歳。
3年生、クラスはC組。
名前を書いた後はクラスを書いて……。
ファイルを書き終わった。