「先生?溜め息つくと……」
「わかってるよ」
俺は彼女が言い終わる前に静かにそう言った。
「帰れって言ったろ?」
「でも、先生が出て来るって思ってたから。だから隠れて待ってました」
“エヘヘ”と笑う彼女。
隠れる必要はないと思うが……。
でも、もう……。
「キミに負けたよ」
俺はそう言ってクスッと笑った。
「先生の笑顔、初めて見た。ちゃんと笑えるんですね」
「あのなぁ……」
ホントにイライラさせるヤツだ。
俺だって笑う時には笑うんだよ。
でも笑ったは久しぶりかもしれないな。
「あっ!」
不意に彼女が声を上げた。
「負けたって、天文部の入部を認めたってことですか?」
「あぁ」
「やった!」
彼女の顔が、さっきよりも笑顔になる。
廃部寸前の天文部。
1週間、入部する生徒がいなかったら廃部決定だった天文部。
新入部員が入ったため、天文部は廃部を逃れた。