どれくらい時間が経ったんだろう……。


準備室の窓から見える空は闇に包まれていた。


化学室のドアが開いた音はしなかった。


まだ彼女は出て行ってないんだろうか……。


それとも俺が気付かない間に出て行ったんだろうか……。


彼女が気になるわけじゃない。


気になるわけじゃないけど……。


俺はノートパソコンを閉じて、準備室のドアを開けた。


準備室のドアから見える化学室はシーンと静まり返っていて誰もいない。


やっぱり俺の気付かないうちに帰ったのかもしれない。


俺は小さく息を吐き、準備室へ戻ろうとした。



「せん、せ?」



不意に後ろから声をかけられ、体がビクンと揺れた。


振り返ると、化学室の机の1番後ろのところに笑顔の彼女が立っていた。