「私、そろそろ帰ります。先生も早く行かないと遅刻しますよ」
「あぁ」
速水が子供をベビーカーに乗せる。
「あ、先生?これ、お返しします」
速水は鞄から茶封筒を出してきた。
「あの時の5万円です。先生に会えたら渡そうと、ずっと持ってました」
「もう、いいよ。それは俺から速水に出産祝いだ」
「そう言うわけにはいきません!約束ですから」
速水は俺の手に茶封筒を握らせた。
「じゃあ、先生」
「ん?あぁ……」
速水はベビーカーを押して、俺の前を通り過ぎた。
…………えっ?
今、はっきりと……。
やっぱり…………。
「速水!」
俺は速水を呼んだ。
でも速水は振り向くことなく公園から出て行った。