「……速水?」
桜の木の下にいる人に声をかける。
声をかけられた人は、肩をビクンと揺らし、ゆっくりこちらに振り返った。
少し大人っぽくなっているけど、あの頃の面影が残っている。
「せん、せ……」
目を見開き、俺を見る速水。
「久しぶりだな。また迷子か?」
「違います。桜が見たくなって……」
俺と速水は笑いあった。
「そっか」
「先生は?学校に遅刻しますよ」
「俺は大丈夫。いつも余裕を持って行動してるから」
「そうですか」
速水はそう言って、再び桜の花を見上げる。
その時、速水の足元から子供の声が聞こえてきた。
下を見ると、速水の隣にベビーカーがあることに、今、気付いた。



