「琴梨、ちゃん?」
ドアの前に、しゃがんでいた私に声をかけてきた人……。
「間宮さん……」
私は顔を上げ、間宮さんを見た。
「どした!?」
「朝早くからすいません」
「いや、別に構わないけど……。寒いから中入ろ?今、開けるから」
そう言って、間宮さんはドアのカギを開る。
「入って?」
「すいません……」
私は、お店の中に入る。
「何か温かい飲み物出すから、適当に座って?」
私はカウンターの隅の席に座る。
「琴梨ちゃん、何かあった?」
「えっ?」
私はキッチンにいる間宮さんを見た。
「琴梨ちゃんか、1人でここに来るときには何かあるのかなぁって……」
間宮さんはそう言って、私の前に温かいココアを出してくれた。
白いマグカップに注がれたココア。
ココアの上にはフワフワのフォームミルク。
その上には、ココアパウダーで描かれた女の子の笑顔の絵。
カフェラテみたい。
飲むのがもったいないな。
「それ、琴梨ちゃん。似てるでしょ?」
「私?」
「琴梨ちゃんは悲しい顔より笑顔のほうが似合ってる。冷めないうちに飲んで?」
「ありがとうございます。いただきます」
私はココアを一口飲む。
甘くて美味しい。
「間宮さん、私ね……。先生にフラれちゃいました」
私はそう言って、笑顔を見せた。



