追いかけられないだろうというとこまで車を走らせ、そこに車を停めた。
「はぁ……怖かったぁ……」
安堵の溜め息が漏れる。
包丁を持って追いかけられるなんて、人生初だぞ。
てか、映画の中でしか見たことねぇし。
「先生……ゴメンなさい……」
速水は泣きながら謝ってきた。
「いや、別に……俺は、ただ、お前が助けてって言うから助けただけで……。てか、これからどうする?」
「えっ?」
速水が顔を上げて、俺を見る。
「えっ?じゃねぇよ。あんなことになったんだ。家には帰れねぇだろ?」
それこそ命の保証は100%ない。
「あ、そっか……」
そっかじゃねぇよ。
って、俺も後先考えずに、連れて出たのは悪かったと思うけど……。
でも、あの時は必死で、考える余裕がなかったんだ。