速水を見る。
靴を履いている。
鞄も手に持っている。
服もちゃんと着てる。
ここは、一か八か……。
勝負に出るしかねぇ。
俺は速水の腕を掴んだ。
「速水!走るぞ!」
俺はそう叫び、速水の腕を引っ張った。
速水の両親の目が見開いていく。
「待て~!オラァ!」
父親の怒鳴り声が聞こえる。
全てが、今起こっていることがスローモーションになってるような感覚に陥り……。
俺は速水の腕を掴んで必死に走った。
罵声を上げながら父親が追いかけてくる。
後ろをチラッと見ると、包丁を持ち、鬼の形相で追いかけてくる。
途中、階段で転けそうになりながら何とか車まで辿り着き、速水を助手席に乗せた。
運転席に急いで乗り込み、エンジンをかける。
そして父親が来る前に、車を発進させた。



