ヤクザかチンピラか……。
いかつい男が出てきた。
「お前、ホントに客か?」
グッと睨みをきかせ、俺を見てくる速水の父親。
「えぇ、そうです」
こぇぇぇ!!
けど、平常心を保たないと殺られる。
「おーい!客だ!出て来い!」
父親は部屋の奥に向かって怒鳴った。
奥からガタガタと音がして、速水が出てきた。
玄関に来た速水。
殴られたのか?
目が真っ赤に腫れて、口元も青アザが出来ている。
髪もグチャグチャだ。
「可愛い子っすね」
沸き上がる怒りを抑え、そう笑顔で言った。
「だろ?」
父親はそう言ってゲラゲラと下品に笑う。
俺は速水を見る。
速水は俺と目を合わせようとしない。
「じゃあ、アイちゃん、行こうか?」
俺の言葉に速水はコクンと頷いた。
「ちょっと待て。兄ちゃん、前金だ」
父親はそう言って、俺に手を出してきた。
前金?
シマッタ!
客を装ったのはいいけど、金のことなんて考えてなかった。
ヤベェよ。
どうする……。



