「うちにはアイって子はいないよ」
「そうですかぁ?家、間違えたかなぁ?せっかく5万用意したのに……」
さぁ、どう出る?
「5万……?」
中から、そう呟く声が聞こえた。
「すいません。間違えたみたいで……。失礼……」
「ちょっと待って!」
玄関が開いて、中から中年の女性が出てきた。
よしっ!思い通りだ。
「アイは、うちの子だよ」
「えっ?でも、さっき、いないって……」
「あれ?そんなこと言ったっけ?」
とぼけるんじゃねぇよ!ババア!
娘が、どんな源氏名を使ってるのか把握しとけよ!
「アンタ、アイの客かい?」
「客って言うか……今日、初めてなんですけど……。知り合いからアイちゃんを紹介されて……」
「そう……」
開けられた玄関から中の様子を伺う。
でも、速水の母親が邪魔で中を見ることが出来ない。
「ちょっと待ってて?」
母親はそう言って玄関を閉めた。
多分、父親に言いに行ったんだろう……。
しばらくして、玄関が開けられ、そこには今度は父親が出てきた。



