「先生?帰りますね」
「ん?あぁ……。送って行こうか?」
「大丈夫です」
速水はニッコリ微笑むと、椅子から立ち上がった。
「先生、お世話になりました!借りたお金は必ずお返しします」
速水はそう言って体を直角に折った。
「金なんて、どうでもいいよ」
お前にやるよ。
「そう言うわけにはいきません!じゃあ、私はこれで……。あっ!先生にこれ、あげます」
速水は鞄から薄いピンク色の封筒を出してきた。
「私が帰った後に読んで下さいね」
「あぁ」
俺は速水から封筒を受け取る。
「先生?ありがとうございました!」
速水は化学室のドアへ歩いて行く。
「速水!」
化学室から出る直前に速水を呼び止めた。
「何かあったら必ず連絡してこいよ!」
俺の言葉に速水は微笑むだけで何も言わなかった。
そして化学室から速水は出て行った。