「なぁ、速水?」
「はい?」
「お前、まだやってんのか?」
俺が速水に1番聞きたかったこと……。
「あの仕事ですか?」
「あぁ」
「昨日で辞めました。だって言ったでしょ?卒業したら辞めるって。お客さんに話したら皆、納得してくれました」
「そうか。安心した」
理解のある客ばかりで良かったな。
「携帯も新しくしたんですよ?全てリセットするために……」
速水はそう言って鞄から新しい携帯を見せてくれた。
「今流行りのスマホです!まだ、なかなか使いこなせなくて……。電話帳なんて先生しか登録されてないんですよ」
速水はそう言ってクスクス笑った。
「速水?これからどうすんだ?親には?」
「親にはまだ話してません。今日の夜に話して、それから今まで貯めてきた貯金を最後のお金として渡します。腐っても親ですからね。いろいろお世話にもなったし……」
世話してたのは速水、お前だろ?
「で、今日の夜に家を出ます」
「行く宛、あるのか?仕事は?」
「これから探します。住み込みで働けるところでも……」
「それで大丈夫なのか?」
「何とかなります」
何でこいつは、こんなにバカなんだ?
なんとかなるって、なんとかならなかったらどうすんだよ。