最後まで生徒を見送った後、俺は化学室へ行った。
ドアを開けると、いつもの席に速水が座っていた。
「いたんだ……」
「はいっ!だって、ここは天文部の部室ですからね」
「そうだな」
俺はそう言って、ドアを閉める。
そして速水が座る席の向かいに座った。
少し目が赤くて腫れている速水の顔。
「今日は一生分の涙を流しました」
「そうか。速水、卒業おめでとう」
「ありがとうございます。でも、どうしたんですか?改まってそんなこと言うなんて先生らしくないですね」
「あぁ?」
速水にそんなことを言われて、思わず声が出て眉間にシワが寄る。
人が素直に餞の言葉を言ってやったのに。
「先生、怖いです……」
「お前が変なこと言うからだろ?」
「わわ、ゴメンなさい!」
今更、謝ってもおせぇよ!



