速水の家は、住宅街の中にあるアパートだった。
お世辞にも綺麗とは言えないボロボロの木造のアパート。
近所の子供からは“お化け屋敷”と呼ばれてるらしい。
「先生、ありがとうございました」
「速水?ちょっと待って?」
車から降りようとした速水を呼び止めた。
「何ですか?」
速水はそう言って、体制を戻した。
「これ、何かあったら連絡してこい」
俺は自分のメアドと番号が書いてある紙を差し出した。
「えっ?い、いいんですか?」
そう恐る恐る聞いてくる速水。
「特別だ」
「特別、ですか?」
「あ、お前、特別の意味を勘違いすんなよ。俺は教師として生徒である速水が心配なだけだから。速水の仕事のことや家庭環境のことを知ってしまったらほっとけないだろ?」
「そう言う特別ですね。私、バカだから勘違いするとこでした。アハハ」
速水は紙を受け取ると、それを鞄の中に入れた。
「それから……」
「まだ何かあるんですか?」
俺はスーツのポケットから封筒を取り出して速水に差し出した。



