そこから、しばらく続く沈黙。
俺も速水も黙ったまま星を見ていた。
「先生、今日はありがとうございました」
沈黙を破ったのは速水。
速水は星を見たままそう言った。
「何だよ、急に」
「特に意味はありませんが、お礼が言いたかっただけです」
「そっか……。てかさぁ、もう辞めろよ?あんなことするの……。誰にでも股を開くんじゃねぇよ。自分の体をもっと大切にしろ」
「誰にでも股なんて開いてません。私、まだ処女ですから」
「はっ?」
エンコーしてて処女?
ありえねぇだろ。
「お客さんは、中年のおじさんが多いんです。皆、私のことを娘みたいに思ってくれてて……。ラブホに行っても話をしたり、愚痴を聞いてあげたり……」
娘みたいに思ってるヤツが女なんか買うかよ。
「へぇ、密室に男女2人きりで?しかもラブホだろ?セックスするためのホテルだろ?そんな場所で話をしたり、愚痴を聞いてあげるだけで終わり?それで金がもらえるわけ?」
ラブホで、こんな若い子を前にして、ヤらないって……。
ごちそうを目の前にして、マテをくらってる犬じゃねぇか。
「本当なのに……」
速水はそう言って少し俯いた。



