車から降りると、冷たい空気に体が包まれた。
やっぱ山の上は気温が低いな。
街灯ひとつない山の上。
夜空を見上げると、無数の星が目に飛び込んでくる。
地上から見る星空とは比べ物にならないくらいの星の世界か広がっている。
降ってきそうなくらいの星。
宝石箱をひっくり返したような夜空。
手を伸ばせば届きそうなくらい星が近い。
そんな言葉がピッタリ当てはまる。
「先生?」
車から降りてきた速水が俺の隣に並ぶ。
「あ?」
俺は星空を見上げながら返事をした。
「どういう風の吹き回しですか?」
「はっ?」
俺は星空から速水に目を落とした。
「部活動は絶対にしないっていってたのに……」
「今日は特別だ」
久しぶりに綺麗な星空を、七星と一緒に見たこの場所で見たかったんだ……。
でも理由はそれだけじゃない。
速水を帰したくなかったから。
それは好きとかそう言う意味じゃなくて、家に帰すのは危険だと思ったから……。



