速水が何であんなことを聞いてきたのか……。
七星と俺の関係なんて、お前には関係ねぇじゃねぇか。
俺の心の中に踏み込んで来んじゃねぇよ……。
タバコを咥え、火をつける。
少し開けた車の窓から吐き出した煙が出ていき、空に舞って消えていく。
イルミネーションが輝く駅前の大通り。
信号待ちをしていると、見たことある女が横断歩道を渡った。
……速水?
黒いロングコートに黒いロングブーツ。
化粧をして、長い黒髪の女は、まるでキャバ嬢のような……。
化粧をしていても顔は幼いことがわかる。
何やってんだよ。
その時、俺の脳裏に“エンコー”という言葉が浮かんだ。
噂は本当だったのか?
いや、でも、アイツは何を聞いても慌てた様子はなかった。
でも……。
…………チッ!
俺はタバコを灰皿に押し付けた。
車を左折し、駅前の駐車場に車を入れた。
車から降りて、駐車場を出て辺りを見渡す。
…………いた!
あのバカ!
そっちはラブホ街じゃねぇか!
俺は速水にバレないようにあとをついて行った。