「七星ちゃんが、遠くへ行くって言った時、アイツ、すっげー荒れたんだよ。好きでもない女を抱きまくって、酒に溺れ、正気を失ってた。そんなヤツにホントのこと言える?もし、七星ちゃんがこの世にいないってわかったら……」
わかったら?
「アイツ、ホントに壊れるかもしれないし、もしかしたら七星ちゃんを追って……」
死ぬ、ってこと?
「凪は、七星ちゃんを心から本当に愛してたんだ。昔から知ってるけど、今まで凪と付き合った女よりも、七星ちゃんは、もっともっと大切で愛しくて……。そんな凪に俺はホントのことは言えない。知らない方が幸せだってこともあるんだよ……」
「そんな……」
知らない方が幸せだって本当?
確かに、心から愛してた七星さんの死を知らない方が先生にとって幸せかもしれない。
でもね、でも……。
恋人の死を知る権利も先生にはあるんだよ。
それを乗り越えて幸せになれることもあるんだよ。
先生はきっと、今でも七星さんを……。



