化学室へ行く途中にあるトイレ。
その前を通った時、中から女子数人の話し声が聞こえてきた。
「ねぇ、知ってる?」
女って、何で噂話が好きな生き物なんだろう……。
トイレの前を通り過ぎようとした時……。
「うちのクラスの速水さん、いるじゃん?」
速水の名前を聞いて思わず、足が止まってしまった。
「この前、アリサが彼氏と駅前のラブホ街にあるラブホから出たら、速水さんが男と違うラブホから出て来るとこを見たんだって~」
「うそ!速水さんって、彼氏いたんだぁ?」
へぇ。
アリサって、風早(カザハヤ)だろ。
確か、バスケ部の後藤(ゴトウ)と付き合ってるはず……。
高校生のくせにラブホを利用してんじゃねぇよ。
ガキは家でヤれってーの!
てか、保健体育を勉強する前に受験勉強しろよ。
……ったく、どいつもこいつも男の話ばっか。
「彼氏かどうかわかんないけど、うちらの父親くらいの人と出て来たんだって~」
「嘘~!マジ!?」
「うわぁ!キモッ!」
「てかさぁ、もしかしてエンコーしてんのかなぁ?」
「さぁ?でも、もしエンコーしてたらキモくね?オッサン相手なんて無理だわ~」
速水がエンコー?
エンコーって、援助交際だろ?
速水に限って、それはないだろう……。
ただ、年上の彼氏とかじゃないのか?
それか似てる人とか。
速水が七星に似てるように……。
トイレの中は、もう違う話題で盛り上がっていた。
俺は化学室へ急いだ。



