速水を花房先生に託し、俺は部屋に帰った。
夜中だと言うのに、嫌な顔ひとつせず、速水を快く迎えてくれたことに感謝だ。
部屋のソファーに座り、窓を開ける。
冷たい風が頬を掠めた。
もう秋も終わりだな……。
そんなことを思いながら、タバコを咥え火をつけた。
秋の夜空に煙が上っていき、消えていく。
胸元に輝くムーンストーンをギュット握った。
「ムーンストーンにはね、幸福とか豊な愛情って意味があるんだって。それに月の石って素敵な名前だと思わない?」
そう言って、七星がプレゼントしてくれたネックレス。
そう言えば……。
俺はジャージのポケットに手を突っ込んだ。
速水からもらった御守り。
袋から御守りを出す。
なぜ、ピンク?
ピンクの御守り。
しかも……。
何で安産の御守りなんだよ。
俺は子供が産めねぇっつーの!
やっぱアイツはバカだ。
てか、まぁ、アイツらしいけどな。
俺はクスクスと笑いながら、御守りを鞄のポケットに入れた。
タバコを灰皿に押し付け、綺麗にシーツが掛けられたベッドに寝転び、天井を見つめた。
そして、そのまま目を閉じ、深い眠りに落ちた。