「煩い……」


「あ、ゴメンなさい」


「まぁ、いい。それより早くしないと本当に遅刻するぞ?ほら、早くついて来い」



俺はそう言って、車に向かおうとしたけど彼女は、その場に止まったまま動こうとしない。



「おにーさん、ホントに学校の先生なんですか?」


「はぁ?」


「いや、おにーさんが学校の先生って証拠もないし、新手のナンパかな?と……。ホントは車に連れ込んで、変なとこに連れて行くとか……。そんな手には乗りません」



俺の口から溜め息がもれた。


どこまで想像力豊かなんだ……コイツは……。


俺はスーツの内側のポケットに入れてあるアルミの名刺ケースを出した。



「これで信用してもらえる?」



俺は彼女に自分の名刺を1枚、差し出した。