「終わった~!」
速水はホッチキスを置いて、両手を上げた。
「お疲れ様、助かったよ」
俺はそう言って、ホッチキス留めされた資料を綺麗に重ね直した。
どんくさい速水だけど役に立った。
「じゃあ、私、帰ります」
そう言って椅子から立った速水。
今日は素直に帰るんだ……。
「手伝ってくれたお礼に、和也の店に行くか?今日も晩メシ、1人なんだろ?」
「今日はいいです。それに、これ、ボランティアだって言ってたじゃないですかぁ?」
「まぁ、そうだけど……」
「じゃあ、先生、さようなら」
「あ?あぁ、さようなら」
速水は挨拶をして早々に化学室を出て行った。
やっぱ和也に頼んだことを気にしてるんだろうか……。
だから和也に会いにくいとか?
俺はそんなことを考えながら片付けをしていた。
…………あ、ホッチキスがない。
速水が間違って持って帰ったのか?
まぁ、常にいるもんじゃないし、いいか。



