速水が交互に重なった紙の束を片付けている。
そんな速水を見て、ふと和也の店に行った時のことが頭に浮かんだ。
コイツは何か隠してるのか?
でも、悲しそうな顔や辛そうな顔を見たことがない。
修学旅行の申込書に親の名前が書けない理由は何だ?
「……せ?……先生!」
…………ん?
「あ、な、何?」
速水の声で我に返る。
「私の顔に何かついてます?」
「えっ?いや……」
「先生が私の顔をジッと見てたんで何かついてるのかな?と思って……。何もついてないならいいんです」
速水はそう言ってクスクス笑うと、止まっていた手を再び動かした。
「ゴメン……」
俺は呟くようにそう言うと、紙を重ねる作業を再開させた。



