化学室のドアを開けた時、口から溜め息が漏れた。
寝てやがる。
コピーした授業で使う大切な資料を枕に寝てやがる。
溜め息の次は舌打ちが出た。
「おいっ!速水!」
俺は速水の傍に行き、体を大きく揺すった。
「えっ?あ、は、はいっ!」
上半身を起こす速水。
いつもいつも寝やがって。
「わっ!せ、先生!」
「お前、いつも寝てるよな。寝不足か?」
「あ、いえ。寝るのが特技なんです」
そんなもん特技にすんな!
…………って、お前!
速水が枕にしていた資料に目をやり目をクワッと大きく開いた。
そこには大きく丸く濡れていた。
「速水?これ……」
資料を指差しながら速水を見る。
速水の口元がヨダレで光っている。
「えっ?…………あっ!わわ!」
慌てる速水。
口元を拭い、資料の濡れた部分を必死に手で隠そうとしている。
って、そんなことしてもおせぇんだよ!



