「なぁ、凪?」
「ん?」
「琴梨ちゃんの両親はホントに共働きで忙しいのかなぁ?」
「えっ?」
「だって、さっきも言ったんだけど、いくら共働きだからって、娘の学校行事の申込書に名前を書けないって……。それって、おかしくないか?」
「あぁ、俺もそう思う」
和也の言う通りだ。
いくら共働きでも名前くらい書けるだろ。
普通の両親だと思っていたのに……。
本当は……。
「凪?俺がお前に話したことは琴梨ちゃんに黙ってて?凪には言わないって約束したから……」
「あぁ」
「良かった。あ、アイスコーヒー、新しいのをいれてくるよ」
和也は笑顔でそう言って、空になったグラスを持って椅子から立ち上がりキッチンへ行った。
新たにタバコに火をつけ、窓の外を見る。
速水の抱えてるものって何だ?
俺と和也には見えない闇の部分があるのか?
いつも元気で明るい速水。
でもそれは……。