「申込書の保護者氏名を書くところに名前を書いてくれって頼まれて……」
「はぁ?」
速水には、ちゃんと両親がいる。
なのに何で和也に頼むんだ?
意味、わかんねぇよ。
「速水には両親がちゃんといるぞ?なのに、何で和也に?」
「琴梨ちゃんが、両親が共働きで忙しくて家にいないって言ってた。両親には頼めないから俺に書いて欲しいって……。だから保護者氏名の欄に琴梨ちゃんの父親の名前を書いたんだけど……。でもいくら共働きだからって、娘の学校行事の申込書に名前を書けないくらいって事あるのか?琴梨ちゃんが、先生には黙ってて欲しいと言ったんだけど、何かモヤモヤしちゃって、それで、お前なら琴梨ちゃんの両親のことを何か知ってると思って……」
「俺は速水の担任じゃないから、速水の両親のことは何も知らない……。和也と同じで両親が共働きで忙しいとしか聞いてない」
「そっか……」
「あぁ」
俺は短くなったタバコを灰皿に押し付けた。
そして、アイスコーヒーを一気に飲み干した。