「せんせぇ!来ましたよ~」



化学室のドアが開き、元気な声が聞こえてきた。


いちいち来たことを告げなくてもわかるから……。


夏休みに入ってから土日祝以外は毎日、化学室へ来ている速水。


皆勤賞だな。


会社なら優秀者だ。


仕事が出来るかどうかは別として。


暑いけど、爽やかな風を感じていた俺の爽やかさが一気に失われた。



「あれぇ?せんせぇ?いないんですかぁ?」



速水が俺を呼んでいる。


チッ!


めんどくせぇ。


居留守を使おうか……。


でもヤツのことだから準備室に入って来るかもしれない。


俺は準備室のドアを開けた。