「ねぇねぇ、文香。この教室が汚れる
のってさ、梨花が汚いからじゃん。だっ
たらさ。梨花を洗えばいいじゃん。
このモップで!」

そういって、名もわからないクラスメ
ートがもっていたのは、トイレ用の
モップだった。

「それいい!!あんた頭いいね!!」

「えへへ、ありがとー」

事情も知らずにこの光景を見た人は
なんの問題もない仲のいい子たちの
会話に聞こえるだろう。

だけど、私にとっては違う。

地獄への一本道だ。

だけど、唯一の救いがある。

モップは濡れていなかった。


「梨花。」


名前を呼ばれたけど、返事は
しない。

「梨花、放課後、トイレに
来なさい。」

何も言わない。

「来なかったら、どうなるか
わかってるわよね?」

「…っ。」


ここで初めて声が出る。


すると文香は満足げに笑う。


「ふっ、放課後愉しみにして
るわ、梨花。」



私は嫌な予感しかしなかった。



学校が始まって間もない。

2時間目のことだった。