「グループリング」


ーby梨花ー

文香は私の腕を引っ張ってどんどん歩いて行く。
どこに連れて行く気?
「ねぇ、どこに連れて行く気なの?」
「まあまあ、そう焦らないでよ。直にるくからさ」
さっきからこればっかり。
すると、どんどん階段をのぼり始めた。
私たちの学校は北校舎と中校舎と南校舎にわかれ
ていて、渡り廊下で繋がっている。
私たちが今いるのが南校舎の3階。
これ以上上に教室はない。
4階は屋上だ。
屋上への階段はそもそものぼるのが禁止されているし
たとえ上ったとしても屋上の鍵は開いていないから
入る事はできない。
なんのためにここに私を連れてきたの?
文香たちは予想通り屋上への階段を上って行った。
そして屋上への入り口の前で立ち止まった。
当然l鍵は閉まっている。
「こんなところに来て何するの?」
当然の疑問を文香にぶつける。
すると、文香は私の腕をようやく離し私の方を見
て、自信ありげな笑顔を見せて言った。
「まあ見てなって!」
文香はごそごそとポケットをいじくって何か小さ
なものを取り出した。
「ほらっ。見てみな!これ何だと思う?」
文香がポケットから出したのは、屋上のドアを開け
る鍵だった。
「な、なんで文香がそんなの持ってるの?」
これも当然の疑問だ。
屋上への鍵は職員室にある。
それも校長先生の後ろだ。
生徒が手を出せないように厳重保管がされてある。
それを文香が持っているのはおかしいことだ。
文香は自慢するように言った。
「私さ、こないだ校長先生から呼び出しがあったん
だよね」
なにかやらかしたのかという疑問もあったけどひとまず
スルーした。
「それでさ、校長先生の席の近くまで行ったんだよ。
そのときにね、ちょっとだけ先生が席を外してさ。」
ま、まさか・・・。
「だぁれもいなかったから、ちょっと取ってきたんだ」
そのまさかだ。
要するに文香は鍵を盗んだってことだよね。
「鍵、盗んだの?」
「人聞きの悪い言い方するなぁ。ちょっと借りただけ
だよ〜」
文香本人は全く罪悪感のない顔をしている。
むしろ、これが当たり前のようだ。