それでも世界はまわる -white snow-

山、川、道、建物。目に映る全てのものが白く薄化粧をしている。

都会では見ることのできない、忘れかけられた風景だった。

水瀬ほどの山奥に限っては数少ない貴重な動物もいる。
美佳は稀に出会える彼らがとても好きだった。一度は、家の裏山の狸を手懐けたほどだ。
 
冬になると、よほど寒いのか庭の池の鯉もぱったりと動かなくなる。
美佳が小学生の頃天国へ行ってしまったうさぎの小屋も雪をかぶり、愛犬も家の中に入れてやりたいほど切ない目で見上げてくる。

水瀬の冬は、どんなに有名な画家でも全ての美しさを表現することができないくらい、繊細で美しかった。