この二人がレウレトの人格形成において、極めて重大な影響を与えたことはこのノートを見れば明らかだ。その手記の最後には何故、彼が衛星中継で、全世界の民衆の見ている前でピストル自殺という、壮絶なる最期を遂げたのかという答えがそこに綴られている。

 それだけではない。

 決して人前では見せなかった彼の苦悩がそこには記されていた。彼は単なる殺戮者ではなかった。彼は愛に生きた人間であった。そう、彼もまた吾人と同じように純愛を求めるがために悩み、人情反覆の間にもがきながら、ひたすら前を向いて歩んできたのだ。それゆえに彼の人生に万邦万民(ばんぽうばんみん)は魅了されてやまないのである。

 レウレトの人生は見る人によって違う色を見せる。それは光を当てると五彩を放つ、プリズムにも似ている。

 私は彼の伝記を書くに当たって、この二人の女性とそれに関わった人々の人生から記していこうと思う。その方が有意義であると私は考えるからだ。

 読者諸君へ、いましばし、筆者に付き合って頂きたい。